「駄菓子」と錦糸町の縁とは
「駄菓子」とは、主に子ども向けに作られるお菓子。素材は手軽で大衆的なもので、価格も安め。江戸時代に庶民でも手の届く素材や甘味材を使って作られたのがルーツで、明治時代に高級な「上(菓子)」の対語として「駄」を付けて呼ばれるようになったようです。
[参考資料]
三幸製菓株式会社
「駄菓子の定義って?黒砂糖やザラメを使った江戸時代の庶民のお菓子が話題に」
https://www.sanko-seika.co.jp/ochanoma/article/dagashi.html
「錦糸町エリアマップ」(墨田区/一般社団法人墨田区観光協会)では、「お菓子の街 錦糸町」として錦糸町駅の北側エリアに「関東大震災後の区画整理で千代田区神田付近の製菓関係者が集団移転し、菓子問屋が軒を連ねた」といった経緯が解説されています。
今では最盛期のような賑わいはとてもありませんが、「作っている」・「売っている」各スポットがまだ健在。ゆるゆるとさんぽしてみましょう。
「売っている」有名スポットへ(その1)
まずは、JR錦糸町駅北口のすぐ近くにある「駄菓子とおかしのみせ エワタリ」へ。
▲「ここは駄菓子の総合デパート♪」とPRするお店です。
お店サイトでは、[神田から集団移転した先は、旧陸軍糧秣廠跡地][戦後は飴製造が盛んだったが、現在では製造所は数軒に減少][50軒以上あった駄菓子問屋も4軒に減少]など、勉強になる詳しい情報も提供されています。
▲ビル1階は、バラ売りコーナー。見たことあるもの/ないもの、実にたくさんの種類の駄菓子が並びます。1,000円も出せば、持ちきれないくらいの量を買えそう。駄菓子の〝大人買い〟を一度いかがでしょうか?
▲2階では、箱やパッケージ丸ごとのまとめ売りをしています。もともと「問屋」なので、むしろこちらの売り方が本来なのかも。整然と陳列されたボリューム感に、圧倒されます。
ビルの外壁には、超有名な駄菓子「うまい棒」のキャラクターが大きく描かれています。その名「うまえもん」は、1979年の発売当初からパッケージに登場する「宇宙人」。デビュー以来半世紀近い〝大ベテラン〟なのです。
なお、この商品のほかいろいろな駄菓子を販売している「株式会社やおきん」も、すみだの地で65年以上の歴史を刻む地元企業です。同社の商品ラインナップ紹介サイトを見れば、知っているものも多いかもしれません。
[参考資料]
株式会社やおきん
「やおきんドットコム」~「すべての商品」
https://www.yaokin.com/products.html
▲参考までに、同社本社は錦糸町の北側エリア・横川5丁目にあります。1階奥のシャッター、以前は「うまえもん」のイラストが大きく描かれていましたが、今はなくなったようです。
▲同社はファブレス企業(生産設備は持たずに、他社に生産を委託)で、主力商品「うまい棒」は、リスカ株式会社(茨城県常総市)が生産を担当しています。
「売っている」有名スポットへ(その2)
続いてやってきたのは、複合施設「オリナス錦糸町」。この中にも、大きな駄菓子店があります。
▲写真右側、オフィスビルとタワーマンションが空高くそびえています。その足元に商業施設「オリナスモール」が見えます。
オリナスモールの3階にあるのが「1丁目1番地」。全国あちこちの大型ショッピングモール内に出店しているチェーンです。昭和30年代の駄菓子屋をイメージした装飾で、懐かしい駄菓子や玩具等を販売しています。
▲「エワタリ」は、いかにも〝問屋〟風な店内でしたが、こちらはディスプレイを見ながら楽しめそうな雰囲気。写真の中だけでも、「鉄人28号」「ゲゲゲの鬼太郎」「目玉おやじ(鬼太郎の父)」などの姿が。店内の中央部には、「あしたのジョー(矢吹丈)」の座像(存在感大!)があります。
近くの公園でひと休み
2つのお店ですっかり童心に帰って(笑)、いろいろな駄菓子を買ってしまいました。折角なので、近くの「錦糸公園」でひと休みがてら、早速味わってみましょう。
▲錦糸公園の北側には、オリナス錦糸町のオフィスビルや足元の商業施設の姿が。その左側には、東京スカイツリーが青空にくっきりと見えました。かつての陸軍糧秣廠は、錦糸公園の場所を中心として、周辺エリアにも倉庫群が点在していたようです。
▲近くのコンビニで買った飲み物とともに、先ほど買った駄菓子を公園のベンチに並べてみました。素材も味もさまざまなラインアップ、実に11個! どれから食べるか、目移りしてしまいます。(ちなみに、11個全部のお値段360円足らずでした)
駄菓子(屋)は、江戸・明治以来の〝庶民の味〟です。日常の生活シーンで普通に登場する背景もあってか、永井荷風さんの作品の中にもこの言葉がたびたび登場します。例えば、『すみだ川』(1909年)、『日和下駄』(1915年)、『つゆのあとさき』(1931年)。そして、代表作日記文学『断腸亭日乗』の1940年3月12日。
この日、自作小説『すみだ川』の舞台上演を観劇した際、ヒロイン・お糸を演じた女優・筑波雪子の様子を記述しています。~「雪子舞台裏の板はめによりかかり芸者の姿にて何やら駄菓子を食ひ指をなめながら出端(出番)を待てる様子を見るに・・・」。何ともいえないなまめかしさが伝わってきます。
荷風さん、こうした芸者姿を見て、この作品を執筆した当時に新橋の芸者・富松と深く交際し互いの腕に(相手の本名と)「命」の入れ墨をしたことを、「夢のやうに思返さるる」と懐かしそうに述べています。駄菓子がきっかけで、思いがけない回想につながっていくところがユニークですね。
「作っている」スポットへ(その1)
錦糸公園の南側のエリアには、今でも製造を続けているところが数軒あります。まずは、きなこ棒(「棒きなこ当」)を作る「西島製菓」を訪ねてみましょう。
▲近代的な住宅ビルの1階が工場となっています(撮影時期1月上旬)。出来たてを小売りしてくれます。錦糸町エリアで1958(昭和33)年に創業、今の場所で操業40年ほどと、歴史のある製造所です。
▲工場の一角を撮影させていただきました。主原料の1つ、きなこの〝粉感〟が各機器周りにも見られます。写真右側の壁面には、こちらを訪れた有名人たちのサイン色紙が飾られていました。
▲きなこ棒は、45本入り・小売価格480円。工場直売だと300円とおトクです。「あたり」はゲーム感覚で楽しむもので、お店で交換できるわけではないそうです。会社ホームページの各内容が、なかなか興味深くて勉強になります。
[参考資料]
西島製菓ホームページ「HOME」
https://www.nishijima-seika.jp
同サイト内「作業工程」
https://www.nishijima-seika.jp/process/
「作っている」スポットへ(その2)
続いて訪ねたのは、すぐ近く。ふ菓子の「鍵屋製菓」。1942(昭和17)年創業の老舗です。この商品、見たことあるよ。そんな方も少なくないかもしれません。
▲何ともほほえましい(?)キャッチフレーズの「ふ菓子」は、12本(4本×3段)入り。先出「エワタリ」で購入(324円)。サクッと軽い食感とほんのりやさしい甘み。どこか懐かしさも感じられる素朴な味が魅力です。
▲こちらも、住宅ビルの1階が工場。稼働時間中には、ベルトコンベアー上をふ菓子が流れる様子が窓ガラス越しに道路からも見えます。(取材時には、稼働終了していました)
こちらの会社ホームページも、商品のことをいろいろと教えてくれます。4代目ご主人の根本和浩さんご夫妻の動画も掲載されていて、店の歴史や商品製造への思いを知ることができます。
[参考資料]
鍵屋製菓有限会社ホームページ「TOP」
https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000288819
同サイト内「角麩の元祖!鍵屋製菓ご紹介動画」
https://www.youtube.com/watch?v=s0R5cA1ETno
錦糸町エリアでの駄菓子製造に関する先出の情報[・・・現在では製造所は数軒に減少]が、実感できました。そして、手作り感に満ちた小さな工場たちがご近所エリアでそれぞれ頑張っている姿を見て、応援したい気持ちが高まりました。
さんぽのシメも、錦糸町界隈で
日没にはまだ早いですが、「オリナス錦糸町」の北側エリアにある「TET(テット)」にやってきました。
▲先出「やおきん」本社にも近い、マンションの1階にあります。周辺に飲食店があまりない一角にポツンとたたずむお店は、2018年6月オープン。店外には屋根付きのデッキが設けられて、一軒家にいるようなのんびりとした雰囲気が伝わってきます。
▲店内もシンプルでナチュラルな雰囲気。ゆったりとしたソファーなどもあり、ついつい長居したくなりそうです。
▲「カフェタイム」(14:00~18:00)の時間帯だったので、アルコールメニューは限定的。瓶ビール(キリン・ハートランド、650円)にしました。
▲「カフェタイム」は食べ物もスウィーツ中心で、食事系はイタリアン2品だけ。「前菜」盛り合わせ(350円)を追加してつまみに。
▲イタリアン2品の1つ「ペンネ(ベーコンと季節野菜)」(1,400円)をオーダー。当日の季節野菜、ブロッコリーとちぢみほうれん草は、トマトソースとの相性がぴったり。白ワイングラス(フランス・ロレーヌ産、900円)を追加し、前菜ともどもおいしくいただきました。
▲店内の一角に貼られていた案内書。イタリアン系主体のお店らしく、手打ちパスタづくりを体験できるようです。
店名「TET(テット)」は、創業時メンバーの名前イニシャルをつなげたものだそうです。ほぼ同時期にオープンした姉妹店・ワインバー「リーヴル」が、日本橋横山町で営業しているとのことでした。次は、お酒・料理のラインナップが揃う夜の時間帯に再訪して楽しみたいと思います。
今日のさんぽ を振り返って
錦糸町には駄菓子スポットがたくさんある。~そんな話を何となく聞いていましたが、今日のさんぽでその実態の一端に触れることができました。庶民の味・駄菓子の世界でも、「ものづくりのまち・すみだ」の存在感がしっかりと根付いているのは、喜ばしいですね。
今や、駄菓子屋は〝絶滅危惧種〟ともいわれます。しかし、駄菓子そのものはコンビニやスーパーなどの売り場の一角で(種類はあまり多くないですが)まだまだ手に取ることもできます。江戸以来の庶民の食文化、大事にしたいものです。では、皆さんまたお会いしましょう・・・。